ベビーカーのタイヤ破裂に注意!というニュースが2022年7月28日にテレビを中心に流れました。
ベビーカーを安全に使うためのご参考にしてください。
例
ANNニュース(テレ朝系 「ベビーカーのタイヤ破裂に注意 抱っこひもでも事故(2022年7月28日)」)1分5秒
他のテレビ局2件*1
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)がベビーカーのタイヤ爆発の実験映像を発表して、併せてベビーカー、抱っこひもの安全啓蒙をしようとしたのが、きっかけのようです。
ベビーカーのタイヤの爆発は、タイヤに空気を入れ過ぎて、暑さでタイヤ内の空気圧がさらに上昇すると、爆発に至るということのようです。
2022年4月にベビーカーのタイヤが破裂して子どもが軽傷を負った。という事故が報告されています。
ところで、対象のベビーカーはごく一部です。推測で5%ほど、20人に一人が該当機種です。
また当該機種をご利用されているとしても、このような事故については、業界内で話題になったこともないので、頻度は低いのではと推測します。
通常のベビーカーのタイヤは、発泡ウレタンが多くを占めています。
発泡ウレタンのタイヤは、自転車のタイヤとは異なり、中空ではありませんので、空気を入れることはありません。
空気を入れるタイヤを使用しているベビーカーは、自転車の車輪を小さくしたように見えます。 3輪ベビーカーに多いようです。
空気の入ったタイヤですから、少し径を大きくしても軽くて、サスペンションが無くても、小さなデコボコもソフトに吸収するという特性があり、比較的大型で重い3輪ベビーカーに使われることが多いようです。
代表的なエアバギーというブランド名の3輪ベビーカーなどが、自転車同様に空気を入れるタイヤを使用しています。
コンビのスゴカルとか、アップリカのラクーナ、ピジョンのランフィーなどは発泡ウレタンのタイヤで空気を入れる必要はありません。CYBEXも目に付いた限りのベビーカーは、発泡ウレタンのタイヤでした。
写真の左から、コンビ・スゴカルα、アップリカ・ラクーナクッションAE、ピジョン・ランフィRB2、エアーバギー・COCOブレーキ。左3つは発泡ウレタンのタイヤです。右のエアバギー・COCOブレーキは、自転車のタイヤ同様に、空気を入れるタイヤです。 |
*NITEのタイヤの爆発実験画像に使用されていた3輪ベビーカーは、どの会社の製品かは不知です。念のため。
NITEは、タイヤの適正空気圧を超えて空気を入れないようにと注意喚起をしています。
手でタイヤを押して少しへこむくらいまでにするようにと言っています。
エアコンプレッサーでの空気補充が、超過空気圧の原因となると言っています。適正空気圧がタイヤに書いてあるのでよく見るようにとも言っています。
ところで、ベビーカーのタイヤはプラスチックのリムとなっています。
自転車では金属のリムが使用されています。ベビーカーは乗るお子様の体重が軽いので、自転車の様な強度は必要ありません。
自転車は耐荷重60~90kg程度、エアバギーは耐荷重22kg、通常のベビーカーは耐荷重15kg程度となっています。
リムの強度が自転車に比べて低いので、タイヤの空気圧に負けてリムが破損したのではないでしょうか。
一次情報元のNITEの画像を繰り返し見ましたが、いわゆるパンクをしたのではなく、リムが壊れて吹っ飛んだように見えます。
リムに割れ、欠け、強度に影響しそうな傷がないかの点検もお勧めします。
尚、先に述べた各ベビーカーメーカーで実質国内生産をしているメーカーは無いようです。
エアバギーは、発売当初は日本製と言っていたようですが、現在は他メーカー同様”日本で企画開発したベビーカー”で、中国と台湾の様です。CYBEXは、中国のグッドベビー社のドイツ子会社で、中国で生産されています。
ベビーカーは、自転車の一バリエーションともいえる部品のアッセンブリです。中国でしか生産ができないというのに近い状況です。この辺の事情は、慶應義塾大学経済学部の駒形哲哉教授の研究成果*2が詳しいようです。
エアバギーは、EN1888-2という安全基準をクリアしています。
ENは、European Normの略です。
European Standardとも言われ欧州標準化委員会 (CEN)が作成したEU加盟国間の貿易を円滑化すると同時に産業水準統一化のための『地域規格』です。
ベビーカーは、種類を問わず、欧州安全性規格EN1888に準じて製品の審査と認証を行います。
この基準は、欧州全体で一律のベビーカーの技術的安全要件と審査手順を規定したものです。
EN1888-2は、利用するお子様の体重が15kg以上22kg迄のベビーカーにEN1888-01と併せて適用される安全基準です。
EN(欧州規格)は、すべての EU 加盟国で国家規格に置き換えられ、これにより、製造業者は、欧州規格を適用する際に、これらすべての欧州諸国の市場に容易にアクセスできることが保証されます。加盟国は、矛盾する国家標準を撤回し、EN
に代わります。
日本では、SGマークがベビーカーでは知られていますが、任意規格です。
財団法人製品安全協会が、構造・材質・使い方などから、生命または身体に対し危害を与える恐れのある製品に対し、安全な製品とし必要なことを決めた認定基準を定めて、基準に適合していると認められた製品にのみ表示されるマークです。詳しくは省かせていただきます。
アメリカでは、ASTM F-833がベビーカーの安全基準で、
米国材料試験協会(ASTM International)が策定する規格ですが、それをもとに国家規格とされ強制規格となっています。
ベビーカーのEN基準の内容については、安全基準自体が有料配布(1部1万5千円から8万円)となっていて、詳しく説明したものは一般にはないようです。
特徴的なのはブレーキで、日本では後輪左右にそれぞれレバーが付いていて、ブレーキを掛けるのですが、ENの基準によると1回の動作で左右の車輪にブレーキが掛かるようになっています。
エアバギーや、CYBEXのベビーカーをご覧いただくと、ブレーキを掛けると後輪の左右両輪にいっぺんにブレーキが掛かるようになっていると思います。
今回の報道と離れますが、ベビーカーでの子供の事故・けがの大半はハンドル側にひっくり返るというものです。
続いて多いのは、シートベルトをキチンと装着していなかったというものです。
国民生活センターが2019年12月12日~2020年1月28日にかけて公表した
ベビーカーの転倒による乳幼児の事故に注意 ‐ベビーカーから転落し、頭部にけがを負い入院する事例も!‐ *3
が、2018年8月から9月にかけて消費者アンケートと実車テストとを実施していて詳しい。
また、消費者庁のVol.541 ベビーカーからの転落事故に注意!は2022年2月には発表されたもので、タイヤの爆発を除いて今回の2022年7月28日のNITEと同様の趣旨です。
なお、東京消防庁が2016年に発表した救急車の搬送データに基づいたベビーカーの危険に関する資料
「ピックアップ1 身近に起きているこんな事故 ベビーカーの事故」*4は、上記の国民生活センターなどの調査と少し異なった結果となっていますが、一般の方へのアンケートと異なり、危害情報と結びついているので、重要視すべき内容と思います。
駒形 哲哉 慶應義塾大学経済学部教授
東アジア自転車産業論(共著) 慶應義塾大学出版会 (2010/12/2)
中国の自転車産業 慶應義塾大学出版会 (2011/7/30)
圧倒的な世界シェアをもつ中国の自転車産業をとりあげ、中国への集中の構造、政府の役割や電動二輪から四輪への発展展望を、徹底した現地調査により多角的に分析し、中国自転車産業のダイナミズムを明らかにする。
ベビーカーが停止中に転倒したというテスト依頼があって、消費者へのアンケート調査と、販売されているベビーカーの調査をしたとのことです。以下サマライズです。
1.アンケート(4歳未満のお子様のいる1,000人)によると約3割(286人)の人がベビーカーごと転倒あるいは子供が転落したことがあると回答
2.市販7機種の実車調査
3.消費者へのアドバイス
4.事業者・業界への要望
脚注:メーカーのその後の対応としては、コンビとアップリカが、下かごのサイズを大きく、また入れやすさの工夫などがなされています。
例1.Aprica オプティア クッション グレイス 360度ビッグバスケット37.9Lの大容量バスケット。
例2.コンビ アクビープラス マルチネットバスケット
シートベルトについても改良されています。(脚注です)
Apricaは、最近発売されたベビーカーには、ベルト装着がしやすいイージーベルトを装備しています。
Combiは、5点式シートベルト(ex.スゴカルスイッチ)で、外しやすいと言っています。
東京という大都市の特性が出ているのかもしれませんが、国民生活センターや、NITEとは異なる視点で、具体性が高いアドバイスとなっています。
ベビーカーの事故を防ぐために
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